リーダーシップとは目標達成に向けて組織を率いる能力を指します。
そして、リーダーシップ理論とは、組織を成果に導くリーダーの共通点や、効果的なリーダーシップの法則を模索する理論です。
リーダーシップの捉え方は様々であり、リーダーシップ理論は時代によって変化し続けています。
この記事では、リーダーシップ理論の変遷と、5つのリーダーシップスタイルの特徴について解説します。
リーダーシップ理論
優れたリーダーの共通点や、リーダーシップを発揮するための法則などを模索するのがリーダーシップ理論であり、これまでに多くの理論が提唱されてきました。
ここではリーダーシップ理論の変遷と、それぞれの理論の概要を紹介します。
特性理論(~1940年代)
特性理論はリーダーに共通している資質や特性を見出そうとする研究のことであり、「リーダーシップを発揮できるかは生まれながらの特性によって決まる」という考えが前提となっています。
その歴史は古く、古代ギリシャ時代の哲学者プラトンの『国家』の中にも特性論の考え方が見られます。
1930年代には、アメリカの心理学者ラルフ・ストッグディルによって調査が行われ、「公正」「誠実」「思慮深さ」「公平」「独創性」「社交性」「頼もしさ」などの特性が優れたリーダーに共通しているとされました。
しかし、それぞれの特性の定義が抽象的で定量的な測定が困難なことや、それぞれの特性とリーダーシップとの因果関係がはっきりしないことなどから、リーダーシップの研究にはより多角的なアプローチが求められるようになりました。
行動理論(1940年代~1960年代)
行動理論は優れたリーダーに共通する行動パターンを見出そうとする理論で、代表的なものにPM理論やマネジリアルグリッド理論があります。
リーダーシップを発揮できるかは生まれ持った特性ではなく、行動によって決まると考えることで、「優れたリーダーになるにはどのようにすれば良いか」という問題にアプローチできるようになりました。
しかし、ある状況では優れた行動であったとしても、他の状況には適していない場合があり、行動だけに着目するのは不十分だと考えられるようになりました。
条件適合理論(1960年代~)
行動理論において優れたリーダーとされる人が組織を率いていても、必ずしも成果を上げているわけではないことが指摘されました。
そこで、リーダーの行動と周りの状況の関係を明らかにしようという研究がされるようになり、条件適合理論が生まれました。
条件適合理論では、どのような状況にも適している唯一最善のリーダーシップはないと考え、リーダーシップのあり方はメンバーの性質や仕事の難易度などによって変えるべきだとします。
代表的な理論には、コンティンジェンシー理論やSL理論、パス・ゴール理論などがあります。
コンセプト理論(1980年代~)
コンセプト理論は、条件適合理論の「リーダーシップスタイルは状況によって変化させるべき」という前提を引き継いだ理論です。
コンセプト理論では、ビジネス環境や組織、メンバーの状況に応じて、さまざまなパターンのリーダーシップのとり方を研究して具体的に落とし込みました。
5つのリーダーシップスタイル
コンセプト理論での代表的な5つのリーダーシップスタイルを紹介します。
カリスマ型リーダーシップ
カリスマ性を持ち、並外れた行動力や発想力によって組織を率いるタイプのリーダーシップです。
コンセプト理論においては、カリスマ性を先天的に備わった資質と考えず、部下にカリスマと認知されることでリーダーはカリスマとなると考えます。
特徴としては、「ビジョンを示す」「リスクをとる」「環境を現実的に評価する」「メンバーを理解しニーズや感情に対応する」「並外れた行動をとる」などが挙げられます。
カリスマ型リーダーシップがうまく機能すれば、組織を急成長させる原動力になりますが、リーダーの影響力が強すぎることで他のメンバーの自主性が失われたり、後継者が育たなくなったりする懸念もあります。
変革型リーダーシップ
組織が経営危機に瀕したときなど、変わらなければならないときに効果的なリーダーシップスタイルです。
メンバーの自発的な行動を促し、大きな改革を進めるように働きかけることが求められます。
代表的なものとして、コッターによる「リーダーシップ論」やティシーによる「現状変革型リーダー論」などが挙げられます。
コッターはリーダーシップとマネジメントを明確に区別して、「リーダーシップは変革能力であり、マネジメントは管理能力である」とし、変革のためにはリーダーシップが必要だとしています。
ティシーは、リーダーが組織のあらゆる階層に存在し、彼ら自身が次代のリーダーを次々と生み出していく「リーダーシップ・エンジン」という仕組みこそ、組織が永続的に「勝ち」続けていくために必要であると提唱しています。
変革型リーダーシップにおいてはビジョンを提示し、それを実行するためにメンバーに働きかけることが重要です。
EQ型リーダーシップ
組織内の人間関係やメンバーのモチベーションの維持など、感情面を重視するタイプのリーダーシップです。
EQとは「Emotional Intelligence Quotient」の略で、直訳すると「感情的知能指数」となり、「心の知能指数」と呼ばれています。
EQ型リーダーシップは20世紀末期にダニエル・ゴールマンにより提唱され、「部下の感情を正しく方向づけすることで、組織運営を良い方向へ導く」という考え方に基づいています。
メンバーとのコミュニケーションが不可欠とされており、以下4つのポイントを段階的にクリアすることでEQ型リーダーシップを適切に発揮することができます。
1.自分の感情を認識する
2.自分の感情をコントロールする
3.他者の気持ちを認識する
4.人間関係を適切に管理する
ファシリテーション型リーダーシップ
メンバーの自主性を重視して業務意欲や成長を促すスタイルのリーダーシップです。
上下関係に基づくコミュニケーションではなく、中立的な立場で質問や傾聴をすることによって、メンバーの意見を引き出すのが特徴です。
メンバーの主体性を尊重するため、メンバーのモチベーション向上に効果があります。
ですが、メンバーの意見の取りまとめがうまくいかなければ、議論が堂々巡りとなり、意見の対立からメンバー間の軋轢を生む危険性も孕んでいます。
そのため、リーダーはファシリテーションのスキルを身につけるとともに、日頃からメンバーとの信頼関係を築くことが必要です。
サーバント型リーダーシップ
リーダーがサーバント(servant:使用人)のように振る舞い、メンバーに奉仕することで組織を率いる形のリーダーシップです。
通常の組織ではトップダウン型の組織構造になっていますが、サーバント型リーダーシップではピラミッド構造が逆さまになり、社長よりも一般社員のほうが主役だと考えます。
リーダーが裏方となってメンバーをサポートすることにより、メンバーは顧客に奉仕することができ、顧客満足度の向上につながります。
しかし、ビジョン、ミッションの伝達や最終的な意思決定など責任はリーダーにあり、その上でメンバーをうまくサポートすることが重要です。
まとめ
リーダーシップ理論とは、優れたリーダーの共通点や、リーダーシップを発揮するための法則などを模索する理論のことであり、時代とともに変化してきました。
現代では、「リーダーシップスタイルは状況によって変化させるべき」という考えが主流になっています。
「カリスマ型リーダーシップ」「変革型リーダーシップ」「EQ型リーダーシップ」「ファシリテーション型リーダーシップ」「サーバント型リーダーシップ」などのリーダーシップスタイルがあり、状況や目的によって効果的なリーダーシップのあり方は異なります。
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