組織やチームを率いるためにリーダーシップは必要な能力であり、そのあり方は時代とともに変化してきました。
近年注目されているリーダーシップスタイルの一つに、「オーセンティックリーダーシップ」というものがあります。
この記事では、オーセンティックリーダーシップが注目される背景や、身につけるためのポイントを解説します。
オーセンティックリーダーシップとは
オーセンティック（authentic）は「本物・真正・確実」などの意味を持つ言葉で、ここでは「自分に正直になる」「自分らしさ」といった意味で使われています。
オーセンティックリーダーシップとは、人のやり方をまねるのではなく、自分らしさに基づいた価値観や信念によってリーダーシップを発揮することです。
メドトロニック社の元CEOであるビル・ジョージ氏が2003年に著書『ミッション・リーダーシップ』で提唱したことで、世界的に注目を集めるようになりました。
オーセンティックリーダーシップが注目される背景
従来はトップダウン型の経営が主流であり、リーダーが時代の流れを予測し、組織としてのゴールや戦略を部下に提示してきました。
しかし、近年はVUCA（ブーカ）と呼ばれる未来を予測することが難しい状況であり、リーダーが一人で膨大な情報を収集・分析し、戦略を練るということは困難かつリスクの高いものとなっています。
変化に柔軟に対応し、多様化・複雑化する市場のニーズに応えるためには、メンバーひとりひとりが個性を発揮することが重要であり、トップダウン型に変わる新しいリーダーシップが求められるようになりました。
新たなリーダーシップの一つとして、自分らしさを重視するオーセンティックリーダーシップに注目が集まっています。
オーセンティックリーダーシップに求められる5つの特性
オーセンティックリーダーシップを発揮するために重要とされている５つの特性を紹介します。
自身の目的を理解する
オーセンティックリーダーシップでは自分らしさを重視するため、自分自身を深く理解することが求められます。
自分がどのような目標・目的を持っているのかをはっきりさせることは、モチベーションの維持や、情熱を持った行動につながります。
自身の価値観・倫理観に基づいた行動する
他者に流されることなく、自分自身の価値観・倫理観に従って行動することで、周りの人から信頼されやすくなります。
状況が目まぐるしく変化して先の見えづらい状況において、自分軸を持って判断・行動できることは非常に重要な能力です。
真心をもってリードする
組織を率いるためには、真心や情熱を持ってメンバーに向き合い、信頼関係を築くことが欠かせません。
そのためには、自分らしさを大切にし、ときには弱さも見せ、自分の考えを正直に伝えることが必要です。
継続的に人間関係を構築する
自分らしさを求められるのはリーダーだけではありません。
メンバーひとりひとりが自分らしくあることが大切です。
安心して自分らしくあるため、そしてお互いに支え合える関係を築くためには、積極的なコミュニケーションが必要です。
自らを律する
自分の価値観や倫理観を見失わず、一貫した行動をとるためには、自らを律して学び続ける必要があります。
また、ストレスに対処する術を身につけるなどの自己管理をすることは、継続して高いパフォーマンスを発揮するために重要なことです。
オーセンティックリーダーシップを習得するためのポイント
オーセンティックリーダーシップを習得するには、次の５つのポイントを押さえるとよいでしょう。
自己理解を深める
オーセンティックリーダーシップでは自分らしくあることが求められるので、強みや弱み、価値観など、自分自身について深く理解することが必要です。
自己認識（セルフアウェアネス）の能力を高める方法として、自分史を作ることが有効です。
これまでの経験からどのような価値観を形成してきたかを自問自答することで、自身の価値観を明確にすることができます。
価値観・倫理観を体現する
組織を率いるには、価値観や倫理観を自分で理解するだけでなく、それらを行動に移す必要があります。
他のメンバーからの信頼や協力を得るためには、自ら率先して動く行動力、自身の価値観や倫理観を貫き通すための自律心を身につけることが大切です。
自身の価値観や倫理観に従って、一貫した言動をとることを心がけましょう。
自分の弱みを開示する
自分らしくあるためには、自身の弱みを受け入れることが欠かせません。
リーダーが弱みをみせることで、「弱さをみせてもいい」「完璧じゃなくていい」という考えが広がり、他のメンバーも弱みをみせやすくなります。
苦手なことや不安なことを隠さずにいれば、お互いの弱点を補い合える関係になり、失敗やリスクを恐れない文化を育むことができます。
自分の行動を振り返る
自分のとった行動が、自身の価値観・倫理観に沿った行動であるかを確認し、軸がぶれないようにすることで、信頼性や求心力が高まります。
常に振り返りを行って、状況にあった考えや行動ができているかを吟味することも大切です。
非認知能力を高める
非認知能力とは「意欲・協調性・粘り強さ・忍耐力・計画性・自制心・創造性・コミュニケーション力」など、数値では測定しづらい能力のことであり、リーダーシップを発揮するためには重要な能力です。
非認知能力は集団行動の中で困難や挫折などを通して養うと良いとされているので、自分の内面と向き合うだけでなく、チームのメンバーと協力し合うことによって非認知能力を高めていくとよいでしょう。
まとめ
オーセンティックリーダーシップとは、人のやり方をまねるのではなく、自身の価値観や倫理観にしたがって組織やチームを率いる、自分らしさを重視したリーダーシップスタイルです。
未来の予測が困難な時代において、トップダウン型に変わる新しいかたちのリーダーシップが求められるようになり、その一つとしてオーセンティックリーダーシップは注目されています。
オーセンティックリーダーシップを発揮するには、「自身の目的を理解すること」「自身の価値観・倫理観に基づいた行動すること」「真心をもってリードすること」「継続的に人間関係を構築すること」「自らを律すること」が重要です。
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