近年、リスキルという言葉を耳にする機会が増えてきました。
リスキルとは、新しい職業に就くため、あるいは今の業務において社会の変化に対応するために、学び直しによって新たなスキルを習得することです。
この記事では、リスキルが注目される背景やリスキルを実施するメリット、リスキルの進め方について解説します。
リスキルとは?
リスキル(リスキリング)は学び直しという意味で使われる言葉です。
ここでは、似たような意味のリカレントとの違いも含めてリスキルについて解説します。
リスキルの定義
経済産業省が公開している資料によるとリスキルは、次のように定義されています。
新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること
時代の変化に適応するためには新しい知識やスキルを身につけることが必要です。
近年、デジタル化が加速してIT関連のスキルが求められていることから、リスキルの必要性は増しています。
リカレントとの違い
リスキルに似た言葉にリカレントがあります。
リカレントとは、学校教育からいったん離れたあとも、それぞれのタイミングで学び直し、仕事で求められる能力を磨き続けていくことです。
学び直しという点ではリスキルと同じですが、リカレントは仕事から離れて教育機関で学習することが多いのに対して、リスキルは働きながらスキルを習得することが前提になっています。
どちらも仕事のための学び直しですが、学習スタイルに違いがあるのです。
リスキルが注目される背景
世界経済フォーラム年次会議(ダボス会議)では、2018年から「リスキル革命」と呼ばれるセッションを行っており、2020年には「2030年までに全世界で10億人のリスキルをめざす」と宣言しました。
その影響もあり、リスキルの注目度は高まっています。
DXの推進
近年、多くの企業でDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みが進められています。
新型コロナウイルスが流行した影響で、新しい働き方に対応しなければならなくなり、デジタル化は一気に加速しました。
デジタル化への対応が必須になったものの、すぐに外部からデジタル人材を確保するのは困難なため、既存の従業員にデジタル関連のスキルを身につけてもらうことを目指す企業が増えています。
キャリア(就労期間)の長期化
人生100年時代と言われるようになり、定年の延長などによってキャリアが長期化しています。
長く現役で活躍するためには、時代の変化に合わせて新たなスキルを身につけることが必要であり、学び続ける姿勢が大切なので、リスキルが注目されています。
リスキルのメリット
リスキルを実施することで企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
多くの良い影響がありますが、ここでは3つのメリットをご紹介します。
組織全体のスキルアップ
リスキルに取り組めば従業員はスキルアップできますし、従業員同士で知識や技術を共有すれば、組織全体のスキルアップも期待できます。
また、新しいスキルを習得することは、モチベーションアップや仕事に対する満足度の向上につながり、組織にとって良い影響をもたらします。
生産性の向上
リスキルによってデジタル関連の知識を得れば、これまで手作業で行っていた業務をデジタルツールを用いて効率化することができます。
作業時間を短縮できれば、より重要な業務に時間をあてられるので、生産性や業績の向上につながるでしょう。
イノベーションの促進
新たな知識を身につければ視野が広がるので、これまでにないアイディアが生まれ、イノベーションが促進される可能性が高まります。
既存の商品・サービスを改良したり、新たな事業を立ち上げたりすることで、企業の価値を高めていくことは、企業を長く続けていくために大切なことです。
リスキルに取り組む際の注意点
リスキルには様々なメリットがありますが、取り組み方によっては成果が出にくくなってしまうこともあります。
ですので、リスキルを推進するときに注意すべき点についてもお伝えします。
モチベーションの管理
リスキルを推進すれば、「多くを学んで結果を出さねば」などと従業員がプレッシャーを感じてしまう場合があります。
また、学ぶことを強要されているように感じることもあるでしょう。
仕事へのモチベーションが低下しないように、サポートを充実させて、学びやすい環境を作ることが必要です。
リスキルの目的を明確にしたり、評価制度を整えたりするなど、モチベーションを高める工夫をするとよいでしょう。
時間の捻出
リスキルの場合、スキルの習得は通常の業務と並行して行われるため、時間を確保するのは困難です。
多忙な中で新たなスキルを習得しようとすれば、疲労などによりモチベーションや生産性が低下してしまうことも考えられます。
従来の業務を整理するなどして環境を整え、従業員に負荷がかかりすぎないようにすることが必要です。
リスキルの進め方
リスキルはどのように進めればよいのでしょうか。
効果的な進め方を4つのステップに分けて説明します。
目的の明確化
まずは、目的を明確にすることが必要です。
既存の事業を成長させたいのか、新規事業を立ち上げたいのかによって、習得すべきスキルに違いがでるので、組織としてのビジョンを明らかにしましょう。
ビジョンを発信してリスキルの重要性が伝われば、従業員の納得感やモチベーションを高めることができます。
習得するスキルの選定
組織の目指す方向が決まったら、習得するスキルを選定します。
面談を実施するなどして、従業員が持っているスキルを確認したり、現場のニーズを確認したりして、必要なスキルを選びましょう。
従業員自身のキャリアアップにつながるスキルを選ぶことで、意欲的に学習に取り組むことができます。
教育プログラムの選定
習得したいスキルに合わせて教育プログラムを選定し、教材を用意します。
学習する方法としては、eラーニングや社外研修、社内勉強会などがあります。
学びやすさや教材を用意するときのコストなどを基準に選ぶとよいでしょう。
習得したスキルを活用する場を提供
学んだ知識を確かなスキルにするには実践が必要ですので、習得したスキルを現場で活かす機会を設けるようにしましょう。
例えば、別の部署の新たな業務を体験させることは、リスキルによって学んだ知識を定着させるのに役立ちます。
活躍できる機会が増えれば、従業員のモチベーションの向上や組織全体のパフォーマンスの向上につながります。
まとめ
リスキルとは、社会の変化に対応するために、業務上で必要となるスキルに関して学び直しをすることです。
DXの推進やキャリアの長期化によって、リスクの注目度は高まっています。
リスキルによって従業員がスキルアップすれば、組織全体のスキルアップにもつながりますし、生産性の向上やイノベーションの促進も期待できます。
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