組織やチームの成果を上げるためにはリーダーシップが欠かせません。
その一方で、リーダーを支えるための「フォロワーシップ」を持ったメンバーの存在も、組織やチームにとって重要です。
この記事では、フォロワーシップの効果や5つのフォロワータイプ、フォロワーシップを高めるためのポイントを解説します。
フォロワーシップとは
フォロワーシップとは、組織やチームのために主体的に考え行動し、リーダーや他のメンバーを支援することを指します。
リーダーと異なる意見を持ったときに提言を行って議論を促したり、必要に応じて周りのサポートをしたりするなど、リーダーの指示に従うだけでなく自発的に組織のゴールに向かって行動できることが、フォロワーシップを発揮している状態です。
メンバーひとりひとりが自律的に行動することや、メンバー同士でサポートし合うことは、組織力を向上させるために重要であり、フォロワーシップはリーダーを含めた全メンバーに求められます。
メンバーシップとの違い
メンバーシップとは、立場に関係なくそれぞれの役割を果たすことによって組織に貢献するように行動することです。
それに対してフォロワーシップは、フォロワーという立場からリーダーを支援するという側面が強いものです。
つまり、メンバーシップの中にフォロワーシップが含まれているといえます。
注目される背景
近年は将来の予測が困難なVUCA時代であり、ビジネス環境は目まぐるしく変化しているため、迅速かつ柔軟に対応することの重要性が増しています。
リーダーの指示にメンバーが従うというスタイルでは、先行き不透明な状況に適応するのが困難なため、リーダー以外のメンバーにも主体性を発揮することが求められています。
また、人員不足や組織のフラット化によって、現場の業務と管理業務の両方を担うプレイングマネージャーが増加しています。
管理職に過度な負担をかけないようにするためにも、リーダーをサポートするフォロワーが必要です。
このような理由で、リーダーを主体的にサポートするフォロワーシップが注目されています。
フォロワーシップが与える影響
カーネギーメロン大学のロバート・ケリー教授の調査によると、組織が出す結果に対してリーダーが及ぼす影響力は10%〜20%程度であり、それに対してフォロワーが及ぼす影響力は80%〜90%程度だとされています。
つまり、組織が成果を上げるためにフォロワーシップは欠かせないものなのです。
フォロワーシップを発揮することの効果
フォロワーシップを発揮することでどのような効果が期待できるのでしょうか。
ここでは組織にとってのメリットを3つご紹介します。
組織の活性化
フォロワーシップが浸透して組織の目標が共有されると、メンバーの間に一体感が生まれて、組織を活性化させることができます。
また、若手がリーダーをサポートする経験をすることは、次世代の人材育成につながるため、メンバーがフォロワーシップを身につけることは組織全体にとってメリットが大きいといえます。
信頼関係の構築
それぞれがフォロワーシップを発揮し、全員が共通の目的に向かって行動するようになれば、メンバー間の結束力は高まり、信頼関係を構築することにつながります。
また、フォロワーシップを持ち、積極的に意見を述べるメンバーがいると、コミュニケーションが活発化して信頼関係を築きやすくなります。
モチベーションの向上
リーダーの力だけでは組織の成果を上げることは難しいため、リーダー以外のメンバーもモチベーションを高く保って業務に取り組む必要があります。
ひとりひとりがフォロワーシップを発揮し、当事者意識を持って主体的に行動すれば、組織に貢献しているという実感によってモチベーションを向上させることができます。
フォロワーの5つのタイプ
ロバート・ケリー教授は、フォロワーのタイプを「批判的思考」と「積極的関与」の2つの軸をもとに5つに分類しました。
- 批判的思考:リーダーが示す方針や指示内容を主体的に考え、建設的な批判や提言を行うこと
- 積極的関与:リーダーが示す方針や指示内容を肯定的に捉え、積極的に協力すること
模範型フォロワー
批判的思考の傾向と積極的関与の傾向がともに高いフォロワーのことです。
必要に応じてリーダーに対して建設的な批判や提言を行うことができ、他のメンバーとも協調性を持つことができます。
リーダーの右腕のような存在として、組織に足りない部分を補うことができるタイプです。
孤立型フォロワー
批判的思考の傾向が高く、積極的関与の傾向が低いフォロワーのことです。
評論家的存在とされており、建設的な批判や提言を行うという強みはありますが、積極的に組織に関与しないため、「問題児」「頑固」「チームプレーに向いていない」などと評されることがあります。
組織の方針や業務内容に関して納得感を持つことができれば、理想的なフォロワーになる可能性があります。
順応型フォロワー
批判的思考の傾向は低いが、積極的関与の傾向は高いフォロワーのことです。
リーダーからの指示通りに動くことが多いため、「イエスマン」と言われることもあります。
自発的な行動は少ないですが、組織への貢献度は高いため、組織では重宝されるケースも多いです。
発言の機会を増やすなど、主体性を高めることを意識するとよいでしょう。
消極型フォロワー
批判的思考の傾向も積極的関与の傾向も低いフォロワーのことです。
積極的、協力的に関与する姿勢が見られないことから、「主体性がなくおとなしい」という印象を持たれることがあります。
組織への貢献度は低く、フォロワーとしての役割を果たせていない状態です。
メンバーがこうした状態になっている場合は、定期的に話を聞く機会を設けるなどして、職場の人間関係や業務に対する不満を解消し、モチベーションを高めることが必要でしょう。
実務型フォロワー
批判的思考の傾向も積極的関与の傾向も偏りがない、中立的な立場のフォロワーのことです。
自分に与えられた役割や業務には責任を持ち、一定の成果を上げることができますが、それ以外に対しては積極的に関わることをしない傾向があり、組織への貢献度は中程度です。
「バランスが良い」とされる一方で、「チャレンジ精神に欠ける」という見方をされることもあります。
少し高めの目標を設定して挑戦を促すことによって、模範的なフォロワーに近づくことができるでしょう。
フォロワーシップを高めるためのポイント
フォロワーシップはすべてのメンバーに必要なものですが、身につけるにはどうすればよいのでしょうか。
ここではフォロワーシップを高めるために重要なポイントを3つご紹介します。
自分のフォロワータイプを知る
良いフォロワーになるためには、現在の自分のフォロワータイプを知る必要があります。
自分に足りていない部分や、模範的なフォロワーに近づくための方法を知ることで、具体的な行動に移せるようになります。
クリティカルシンキングを身につける
フォロワーシップを高めるには、リーダーの意思決定を絶対に正しいとするのではなく、自分なりの意見を持つ必要があります。
主体的に意見を述べるためには、クリティカルシンキング(批判的思考)を身につけると良いでしょう。
クリティカルシンキングとは、「意思決定は本当に正しいか」「問題の本質は一体何なのか」などと疑問を持って批判的に考える思考法のことです。
ただ否定するだけでなく、反対する理由を明確にして解決策や代替案を提示することが重要です。
積極的にコミュニケーションをとる
フォロワーシップを発揮するためには、積極的にコミュニケーションをとることが欠かせません。
相互理解を深めることでリーダーや他のメンバーへのサポートが円滑になりますし、信頼関係を構築することによって批判的な意見も言いやすくなります。
まとめ
フォロワーシップとは、組織やチームのために主体的に考え行動し、主にリーダーを支援することです。
フォロワーシップを発揮するには、リーダーが示す組織の方針を肯定的に捉えて、組織に貢献しようと積極的に行動することや、リーダーの指示や意思決定に対して、必要に応じて建設的な批判や提言を行うことが重要です。
まずは、「模範型」「孤立型」「順応型」「消極型」「実務型」の5つのフォロワータイプのうち、自分がどのタイプなのかを知り、理想的なフォロワーに近づけるように行動すると良いでしょう。
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